オススメポイント：　1920年代から松竹で活躍し、『隣の八重ちゃん』(1934)、『その夜の女』(1934)など数々の名作を手掛けた島津保次郎監督が1939年に発表した最高傑作ともいわれる大船撮影所で撮った松竹での最後の作品。1930年代後半の東京を舞台にした当時のトレンディ・ドラマだが、その時代の日々の生活や食事を細部までがリアルに活写され、登場人物たちが活き活きと描かれており、時代の記録としても再評価すべき作品。具体的に戦争が描かれ、言及される場面はほとんどなく、製作当時は明るい未来に向けたハッピーエンドな作品だったが、今見るとすでに日中戦争が始まっていた時代に生きた人々の悲劇にも見え、そのラストはあまりにも切ない。1939年キネマ旬報ベストテン第4位。