あらすじ：戦後の高度経済成長期、テレビを買うことが庶民の夢だった時代。わんぱく兄弟はテレビ欲しさに父親と大ゲンカ。東京郊外の新興住宅地を舞台に近所付き合いの煩わしさや、子育ての難しさ、定年退職や老後の問題など、庶民生活の日常を軽妙なユーモアと皮肉たっぷりに描いた名匠・小津安二郎監督の50本目の監督作。小津監督の喜劇作家としての手腕が冴える傑作。

　新興住宅地に住む林一家。この新興住宅地に住む子どもたちの間では奇妙なオナラ遊びがはやっていた。子どもたちの最大の関心事は、まだ市場に出たばかりのテレビである。林家の実、勇兄弟もテレビを見るために、勉強そっちのけで近所に出かける毎日だった。ある日、両親にテレビをせがんで、叱られたことから、この兄弟は誰とも口をきかないというだんまりストを決行することにする。
　巨匠としての地位を確立した小津が肩の力を抜いて撮った軽快なコメディ。サイレント時代から温めていたという「オナラ」ギャグなど、遊び心にあふれている。脚本は野田高梧と小津の共同、撮影は原田雄春、美術は浜田辰雄と基本小津組スタッフで固められているが、音楽だけは当時ほとんどの小津作品を手掛けていた斎藤高順に代わって、新進気鋭の作曲家だった黛敏郎が担当した。