あらすじ：国民的監督ユ・ヒョンモクの代表作。イ・ボムソンの同名小説の映画化で朝鮮戦争後に北朝鮮からの避難民が多く暮らしていた解放村を舞台に、戦争による貧困と絶望、格差社会の不条理の中、それでも懸命に生きる人々の痛々しい姿をリアリズムで描いていく。公開当時には韓国社会を批判したと上映禁止となったが、今では韓国映画史上極めて重要な名作として高く評価されている。

　"誤発弾"とは、過剰な責任と役割を抱え、歯の激痛にも悩まされ、さらに想像を絶する悲劇にも見舞われて、行き先を見失ってしまう主人公の姿の比喩。それは、朝鮮戦争後に行き場を失った多くの韓国人の姿でもあった。張りつめた緊張感のなか、登場人物たちにふりかかる救いのない悲劇の数々。そこに浮かび上がる南北分断の悲哀は、今も強烈に観る者の心に刺さる。
　朝鮮戦争直後のソウル。会計事務所に勤めるチョルホは、妊娠中の妻と幼い娘、復員兵で無職の弟と同じく職のない妹、新聞配達をする末弟、それに精神を患い寝たきりの母と共に、バラック小屋で暮らしていた。チョルホの給料では家族7人の生活はままならず、将来の見えない日々に、弟や妹は道を踏み外していく。さらに追い打ちをかけるように、チョルホに信じられない悲劇と試練が襲う…。