あらすじ：娘を嫁がせる戦前派の父親を主人公に、老いと孤独の哀愁をユーモアたっぷりに描いて人気の高い巨匠・小津安二郎の遺作。ローアングルの固定画面の中央に位置する登場人物たちによる独特の台詞回しで観客を引き込んでいく小津スタイルの完成形といえる。1962年度キネマ旬報ベストテン第8位。2013年に小津の生誕110年、没後50年を記念してデジタル修復されたリマスター版での配信。

　昭和30年代の日本をリアルに描き、笑えて切ない日本映画史上屈指の傑作と絶賛する声が多い一方、戦前派の中年男性たちの酒席で交わすデリカシーのない上級国民的会話や古い価値観、基本的に女性への配慮が欠如した作劇、現在では政治的に正しくない台詞の多さに、女性を中心に否定派も少なくない。題名は秋の公開が決まっていたため脚本執筆前に付けられていたもので、映画に秋刀魚は登場しない。
　元海軍の艦長で、大企業の重役として働く平山は妻に先立たれ、家事一切を娘の路子に頼っていた。友人が路子の縁談を持ってきても、彼は路子の気持ちも聞かず、まだ娘は結婚する気などないと答えてしまう。だが、同窓会に出席した平山が、酔った恩師を家に送り届けたとき、父親の世話に追われ、婚期を逃がした恩師の娘の姿を見て、路子の縁談を真剣に考えるようになる……。

【配信期間：2021年9月30日～10月29日】